全身の関節が痛い
身体の動作には関節の存在が欠かせません。身体を動かす際に関節は常に稼働しています。
激しい運動や加齢、体重増加、疾患などにより関節にかかる負担が大きくなると、炎症の発生リスクが高まります。
関節に発生した炎症は関節炎と呼ばれ、腫れや痛みなどの症状が起こります。
全身の関節が痛い病気・原因は?
関節炎は急性と慢性に分けられ、原因疾患に違いがあります。以下では、原因疾患について詳しく解説します。
急性関節炎の原因
急性関節炎の主な原因疾患には以下のようなものがあります。
急性の化膿性関節炎(感染性関節炎)
急性の化膿性関節炎は、黄色ブドウ球菌などの細菌が関節内に侵入することで起こります。
単関節に腫れや痛み、赤み、倦怠感、発熱などの症状を示します。
進行スピードが早いことが特徴で、治療せずにいると関節機能に障害が発生する可能性があるため、早期発見・早期治療が欠かせません。
痛風
痛風は、結晶化した尿酸が関節内に溜まって炎症が発生し、激しい痛みを起こす疾患です。
血中の尿酸濃度が高い状態が持続すると発症リスクが上昇します。
以下のような特徴があります。
- 足の親指の付け根部分に痛みが発生する
- 症状を示す関節は1箇所のみ
痛風が起こると痛みにより歩くこともままならなくなります。
少しずつ症状は落ち着いていきますが、治療を受けなければ何度も再発します。
偽痛風
痛風は尿酸の結晶が関節に沈着して引き起こされるのに対し、偽痛風はピロリン酸カルシウムの結晶が沈着して発症します。痛風は主に中年の男性に見られ、肥満やプリン体を多く含む食事や飲み物の摂取がリスク要因とされます。一方、偽痛風は高齢の女性に多く見られ、その原因は不明なケースが多いです。
偽痛風の症状は膝関節や手首、肩関節、股関節、足首などに現れ、関節の突然の痛みや腫れが現れるのが特徴です。
慢性関節炎の原因
慢性関節炎の主な原因疾患には以下のようなものがあります。
関節リウマチ
関節リウマチは自己免疫により関節に炎症が発生する疾患です。
明確な原因は分かっておらず、40~60代の女性に好発します。
以下に示すような症状が全身、左右の関節に同時に起こる特徴があります。
- 関節の腫れ
- 関節の痛み
- 朝のこわばり
全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデスは膠原病の一種で、全身の様々な臓器に炎症や障害が発生します。
年齢問わず起こる可能性がありますが、なかでも20~40代の女性が好発します。
発熱などの全身症状のほか、関節痛や皮膚症状なども現れます。
特徴的な症状として、蝶形紅斑という蝶が羽を広げたような紅斑が鼻から両頬にかけて現れます。
炎症以外の原因
炎症以外の原因には、下記のような疾患が挙げられます。
線維筋痛症
線維筋痛症とは、全身のいたるところに強い痛みを起こす疾患です。
原因は明らかになっていませんが、神経炎症と免疫システムが関係しているのではないかと言われています。
日によって痛みの程度は変わり、精神的ストレス、季節、天候などにより増悪すると考えられています。
睡眠や仕事に差し支えるなど、日常生活に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
変形性関節症
変形性関節症は、関節の骨や軟骨がすり減り、変形・炎症が発生することで、痛みや腫れ、こわばりを起こす疾患です。
加齢に伴って発症リスクが高まり、40歳以上では55%が発症していると言われています。
関節内に水が溜まることもあり、これを関節水腫と言います。
また、関節が変形することにより可動域が制限されるなど機能障害を起こすこともあります。
痛みや可動域の制限などにより、生活に支障を及ぼすことが多いです。
関節が痛い病気の治療
急性関節炎の治療法
以下では、急性関節炎の原因疾患である急性化膿性関節炎(感染性関節炎)と痛風の治療法を説明します。
急性の化膿性関節炎(感染性関節炎)の治療
急性化膿性関節炎では、抗菌薬の使用、排膿、装具による固定、運動療法を行います。
- 抗菌薬の使用
- 排膿
- 装具による固定
- 運動療法
痛風の治療
痛風では、炎症を抑えた上で、尿酸値を改善する治療を行います。炎症を抑えるお薬には、消炎鎮痛薬とコルヒチンがあります。尿酸値の改善には内服薬を使用します。また、再発を防ぐために生活習慣の見直しも必要です。
慢性関節炎の治療
関節リウマチの治療法
主な治療法は薬物療法で、初期の段階から免疫異常を治す抗リウマチ薬を使用します。
状態によっては、炎症や痛みを緩和するステロイドや痛み止め、JAK阻害薬、生物学的製剤などを使用します。
全身性エリテマトーデスの治療法
全身性エリテマトーデスではステロイドを用いた治療を行いますが、重症度に応じて服用量は異なります。
重症例では、ステロイドパルス療法を行います。点滴によりステロイドを投与する方法で、経口投与に比べて高い効果が期待できます。
炎症以外による関節痛の治療
線維筋痛症
現在のところ、線維筋痛症を完治させる方法はありません。
そのため、痛みを抑える薬物療法や機能低下を防ぐ運動療法などが行われます。
痛みを起こす神経伝達物質の放出を抑えるお薬や抗うつ薬が効果的と言われています。
変形性関節症の治療
まずは薬物療法により症状を抑えます。内服薬・外用薬のほか、ヒアルロン酸注射やステロイド注射などを行います。
また、関節機能を維持、改善するために、可動域訓練や筋力トレーニングなどの運動療法を行います。
全身の関節が痛い時の
注意点・予防
- 患部が冷えないようにする
- 階段の昇降や重量物の持ち運び、床に座る、急な方向転換や停止など、関節の負担となる動作を控える
- ウォーキングや水泳などの有酸素運動の習慣化、筋力トレーニングを行う
全身の関節が痛い時は
ご相談ください。
関節が痛むことで全く動かないでいると、関節に拘縮が起きてしまい、さらに痛みが強くなってしまいます。
この負の連鎖が進むと、介助なしでは生活が難しくなる可能性もあります。
関節の痛みがなかなか治まらない場合、放置にせず当院までご相談ください。